【重力の法則】ロジックが正しいほどハメられる「レバレッジETF・ベア投信」長期ガチホの数理ディザスター

世はまさに、新NISA大投資時代。SNSを開けば「インデックス投資をガチホ(長期保有)すれば勝ち確」「レバナスで億り人」といった、お気楽な言葉がタイムラインを埋め尽くしている。

今の市場はただの右肩上がりのイージーモードだから、ぶっちゃけ「誰でも儲かる」状態だ。だが、私はそんな調子に乗っている初心者たち、そして何より「マクロ経済をちょこっと勉強して、ロジックにそれなりの自信を持っている地頭の良いサラリーマン」に、10年前の生存者(サバイバー)として、背筋が凍るような警告を突きつけなければならない。

投資の世界には、人間の精神論や市場のトレンドなど微塵も通用しない、「重力の法則」と同じ絶対的な数理仕様(バグ)が存在する。

これは、かつてメーカーの真面目な社畜でありながら、一応確からしいマクロ経済予測を立てた、にもかかわらず「商品の仕様」と「国策の後出しジャンケン」によってハメ殺され、そして最後に「法律の盾」を使って生還した、私自身の血にまみれた1次情報の記録である。

第1章:重力には逆らえない――ヨコヨコ相場で資産が消える「減価の数理」

まず、すべてのレバレッジ型商品(ETF、投資信託)が**内包している『数学的な仕組み(性質)』**を解説しよう。多くの初心者が「上がったり下がったりを繰り返して、元に戻るならマイナスにはならないでしょ?」と勘違いしている。これが致命的なバグの始まりだ。

レバレッジ商品は、「レンジ(ヨコヨコ)相場において、数学的に必ず元本が減る(逓減・ていげん)」という仕様になっている。

分かりやすく、同じ往復ビンタを2回(4日間)食らうとした仮定で計算して証明しよう。基準価額を「100」とする。

レバレッジなし(現物)の場合

  • 1往復目(1〜2日目):「10%上昇 ➔ 10%下落」
    • 1日目の上昇:100 × 1.1 = 110
    • 2日目の下落:110 × 0.9 = 99
  • 2往復目(3〜4日目):さらに「10%上昇 ➔ 10%下落」
    • 3日目の上昇:99 × 1.1 = 108.9
    • 4日目の下落:108.9 × 0.9 = 98.01
  • ①の結果:現物でも「98.01」に目減りする。

2倍レバレッジ(レバナスなど)の場合

レバレッジ商品は「前日比の2倍」に連動するため、パーセンテージが2倍になる。

  • 1往復目(1〜2日目):「10%上昇 ➔ 10%下落」
    • 1日目の上昇:100 × 1.2 = 120
    • 2日目の下落:120 × 0.8 = 96
  • 2往復目(3〜4日目):さらに「10%上昇 ➔ 10%下落」
    • 3日目の上昇:96 × 1.2 = 115.2
    • 4日目の下落:115.2 × 0.8 = 92.16
  • ②の結果:2倍レバは「92.16」まで強制ドローダウンされる。

③ -1倍インバース(ベア型)の場合

「いや、-1倍はただの『逆相関の等倍』なんだから、**レバレッジをかけていない普通のETF、投資信託(等倍)**と同じダメージで済むだろ」と思ったなら、あなたはまだ数理の罠(減価)を甘く見ている。

インバース商品は「前日のマイナス1倍」に連動する。市場の往復ビンタ(10%上昇 ➔ 10%下落)を喰らわせると、計算の基準値(分母)がズレるせいで、現物以上の損が発生する。

  • 1往復目(1〜2日目):「市場が10%上昇 ➔ 10%下落」
    • 1日目の市場上昇(+10%):-1倍なので資産は10%下落する。

(資産:100 × 0.9 = 90)

  • 2日目の市場下落(-10%):-1倍なので資産は10%上昇する。

(資産:90 × 1.1 = 99)

ここまでは現物(99)と全く同じダメージだ。だが、ここからが本番である。

  • 2往復目(3〜4日目):さらに「市場が10%上昇 ➔ 10%下落」
    • 3日目の市場上昇(+10%):資産は10%下落する。

(資産:99 × 0.9 = 89.1)

  • 4日目の下落(-10%):資産は10%上昇する。

(資産:89.1 × 1.1 = 98.01)

  • 結果:なんと、4日間のヨコヨコで結果は**「98.01」**。現物(98.01)と最終数値は同じだが、中身のダメージ効率が狂っている。なぜなら、現物は初日に「110」まで資産が増えて守り(ディフェンス)に入れたのに対し、-1倍は初日に「90」まで資産が強制ドローダウンさせられている。つまり、「市場が上がってから下がる」というヨコヨコ相場において、-1倍は常に『資産が減った状態から、少ない元手で必死に10%取り戻す』という圧倒的不利な数理仕様のデスゲームを強いられているのだ。

「いや、最終的に現物と同じ98.01なら、そこまで大騒ぎするほどの減価じゃないだろ」と冷ややかに笑ったあなたへ。

インバースの目的を思い出してほしい。あなたがこれを買ったのは「市場が下がった時に利益を出すため」のはずだ。

もしこのヨコヨコ(往復ビンタ)が長期化し、10往復、20往復と泥沼のレンジ相場が続いた場合、市場(現物)の価格は**「90.43」「81.79」と、持っているだけで右肩下がりに**下落する。市場が下がったのだから、インバースは利益が出ていなければ計算が合わない。

だが、数理の仕様は冷徹である。どれだけ日数が経とうが、インバースの価格もまた、現物と全く同じ位置まで一緒に自滅(減価)している。

市場が下がっている(勝てる環境)のにもかかわらず、日々のノイズ(往復)によって利益をすべて数理の重力に吸い取られ、現物と一緒に心中させられる。これこそが、-1倍インバースを長期保有したサラリーマンを確実に仕留める、隠された減価の仕様(バグ)なのだ。

これが「減価(げんか)」の正体だ。

相場がただ真横に動いている(レンジ相場)だけで、あなたの資産はこの数式から生じる「摩擦熱」によって24時間体制で蒸発していく。地球上でジャンプしても必ず重力に引き寄せられ、地面に落下するように、この数式に逆らうのは無駄なのだ。当時の日本市場はまさに、この悪魔の「レンジ相場」だった。

第2章:【被弾その1】日経平均下落の「ヘッジ」のはずが、サラリーマン特有の「先送り」で減価沼へ

この仕様を知った上で、10年前の私の愚行を聞いて欲しい。

当時は2016年頃。私はあの「リーマンショックの底」をリアルタイムで経験し、必死に耐えてようやく原資回復(トントン)まで戻したという強烈なトラウマがあった。さらにその後の民主党政権時代の「暗黒の超円高・株安」も見てきた。

私の脳には「株価なんて上がったら下がるのが前提だ。こんな急上昇バブル、そのうち絶対にドカンと下落トレンドに全戻しする」という、過去の経験に基づいた確固たるロジックが構築されていた。半信半疑で、アベノミクスの上昇ウェーブに今ひとつ乗り切れていなかったのだ。

そこで私は、万が一の暴落に備える「賢いヘッジ(防衛策)」として、日経平均が下がると2倍儲かる「日経平均ベア型ETF」を仕込んだ。

「数日だけ持って、少しでも下がったらすぐに売る(短期決戦)」

最初は、その仕様でエントリーしたはずだった。しかし、ここに「サラリーマンの致命的な環境仕様」というバグが牙をむく。

平日の昼間、私はメーカーの通常業務に追われていた。当時はまだ、あの理不尽な「ブチョー」とも関係が悪化しておらず、会社員として真面目に仕事をこなしていたのだ。会議、書類作成、定型業務……チャートを凝視してデイトレードする暇など1秒もない。

思惑と逆に日経平均がじわじわ上がっても、仕事の忙しさにかまけて「まぁ、そのうち下がるだろ」と、損切りを「先送り」してしまった。

結果はどうだ。政府と日銀の強力な株価下支えに阻まれ、相場は下がらない。売るに売れなくなった私は、一番やってはいけないことだが、短期専用の劇薬であるはずのベアETFを、「長期ガチホ」の沼へ沈めてしまい、そのまま放置してしまった。

気がついた時には、第1章で説明した「数理の重力」によって、私の資産の体力はジワジワと削り取られていた。

第3章:【被弾その2】黒田バズーカ前夜に仕込んだ「5倍ベア」が、国策の後出しジャンケンで凍結された日

普通ならここで目を覚ます。だが、マクロ経済の勉強をかじってしまったサラリーマンの執着は、さらなるバグを引き起こす。

それとはまた別のタイムライン。参加した投資セミナーで「日本債券ベア投信(5倍型)も面白いんじゃないの?」という言葉を耳にした。

私のロジックはこうだった。「日本の金利は底を打っている。これ以上下がりようがないのだから、これからは絶対に上がる(金利上昇=債券価格は暴落する)はずだ」と。まだ周囲が誰も金利上昇を声高に叫んでいない時期に、私は先回りして「日本債券ベア5倍」をポートフォリオに組み込み、静かにその時を待った。

――だが、そこに襲いかかったのが、あの「黒田バズーカ(異次元緩和)」という、国家による最悪の後出しジャンケン(仕様変更)だった。

市場原理に逆らい、金利を無理やり低空飛行で固定化する「チート仕様(反則的な外部介入)」が発動したのだ。予測通りに動くはずだった金利はピクリとも動かなくなり、戦線は完全凍結。サラリーマン特有の「まぁ、そのうち元の政策に戻るだろう」という先送り心理も手伝い、私は超短期用の5倍レバレッジを長期保有させられるハメになった。

結果は、無慈悲な数式による資産摩耗だ。5倍の猛烈な摩擦熱(減価)によって元本が焼け野原になった頃、ようやく日銀総裁が交代して金利が上がり始めた。しかし、その時にはすでに、金利上昇の恩恵を受けるための基礎体力(元本)が残っておらず、利益が出ることはなかった。

第4章:【生還】「仕様(制度)」を知る者が最後に勝つ――損益通算という最強のディフェンス

5倍の摩擦により資産が摩耗(減価)し、損失が発生した。だが、そこで思考停止はしなかった。

待ちに待った頃、金利は上がり始めたが、投信は自分のイメージ通りには上がらない。ここで保有商品を真剣に調べた結果、「これ以上保有していても数式に殺されるだけだ」というバグを冷静に検知し、私は血の涙を流しながらも全額を「損切り」した。

そして、ただ泣き寝入りするのではなく、裏で即座に最強のディフェンスコードを実行した。

それが、国家が定めた税制の仕様――「株式の売却益」や「配当利益」との『損益通算(そんえきつうさん)』である。

レバレッジの失敗で出たマイナス(損失)を、これまで運用して積み上げてきた他の個別株の利益や配当金とガッチャンコ(相殺)させたのだ。これによって、すでに国に納めていた、あるいは納めるはずだった税金を合法的に引っぺがして手元に取り戻し(還付)、実質的な総資産のダメージを最小限に抑え込むことに成功した。

大爆死の淵の淵で、私を救ったのはマクロ経済の予測力ではない。「税制(制度)の仕様を知っている」という、単純な事前準備だったのだ。

結論:会社に脳を売るエネルギーがあるなら、自分の人生の仕様書をデバッグせよ

私は当時、まだブチョーとも揉めておらず、メーカーの奴隷として真面目に会社の業務をこなしていた。

だが、今でも激しい後悔とともに自分を殴り倒したくなる。

「会社の定型業務や理不尽な命令には、あんなに真面目に、冷徹に納期やルールを守ってリソースを割いていたくせに、なぜ自分の人生を左右する『資産形成』という最重要プロジェクトを、仕事(業務)として真剣に管理しなかったのか?」と。

投資を「趣味」や「一時の博打」と舐めていたからこそ、損切りを先送りした。もしあの時、これを本業のタスクだと思って仕様通りに損切りしていれば、私の会社からの亡命(自由)はもっと早く訪れていたはずなのだ。

そもそも、相場という戦場に参加していなければ、いくら頭の中で予測が正しくても1円の利益にもならない。計画を立て、それに基づき淡々と商品を購入し、ルール通りに取引を執行していく。この一連のプロセス(仕様)を回して初めて、利益という結果に繋がるのだ。これは、会社における「プロジェクトの進め方(業務)」と完全に共通する法則である。当時の私は、会社の業務ではそれができていたくせに、自分の投資では完全に「ただのサボり(職務怠慢)」をやらかしていた。

今の相場はイージーだから、ぶっちゃけ誰でも儲かる。だが、歴史は繰り返す。恐らく数年以内に、何も知らない新NISA勢の何割かは、当時の私のようにレンジ相場と国策の罠にハメられ、ひどい目に遭うことになるのだろう。

読者の諸君に言いたい。

もし君が、平日の昼間に会社に脳を売って、真面目に働くエネルギーを持っているなら、そのリソースの半分でもいい、「自分の人生の仕様書(投資・スキル・法律)」を真面目にデバッグすることに100%注げ。

どんなに正しい経済予測(ロジック)を立てようが、ルールの仕様(数理)を知らなければハメ殺される。だが、システムのルールを網羅(大人の学び直し)していれば、負けた時でさえ「法律や制度の盾」を使って生還できる。

会社のために残業するエネルギーがあるなら、まずは「システムの仕様」を正しく見抜く知性を磨く、あるいは人生の防衛策となる知識をインプットすることから始めるべきだ。

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会社なんて定型業務で適当にいなしてやり過ごせ。 本当に真面目に、命をかけて仕様をハックすべきなのは、会社の上司の機嫌ではなく、君自身の人生の資産防衛システムなのだから。